第1.4部予告
--遠い、とおい昔のおはなしです。
とある平和な村に、一人の若者がいました。
若者の自慢は、いっしょに暮らしている、
活発な妹、内気な弟、家族と同じくらい大切な親友と、
どんなことにも動じない、たくましい心です。
村のみんなとも仲良く、静かに、穏やかにすごしていました。
…ある日の事。
村に、悪い怪物たちが襲って来ました。
逃げ惑う村人たち、泣き叫ぶ子供たち。
戦う者も居ましたが、その数は少なく、連れ去られたり、食べられてしまう子供が出てしまうのも、時間の問題でした。
…この村には、みんなを纏め、心を一つにできるヒトが、居ませんでした。
だから、みんなの心は、ばらばら。
戦っている村人も、本当は、逃げたいのかもしれません。
…その時、勇敢な一人の村人が、悪い怪物を一体、やっつけました。
それは、あの若者でした。
彼は、生まれて初めて、激しい怒りを感じていました。
大切な村を、大切な友達を、大切な弟妹を傷付けられた事。
それが、何よりも我慢ならなかったのです。
若者は、泣き叫ぶ子供たちをあやし、逃げ惑う村人を導き、戦う人たちを庇い、誰よりも勇敢に戦います。
…気が付けば、悪い怪物達は、すっかり居なくなってしまいました。
若者は、安心したように息を吐き、みんなの方へ振り返ります。
…誰よりも強く、誰よりも傷付き、誰よりも血を浴びた、若者の姿。
それを見た人たちは、彼を『英雄』と呼び慕いました。
--それから、暫くの時間が流れました。
村に、他所の国から逃げてきた剣士が、やってきたのです。
村の英雄となった若者は、村のみんなと相談して、彼を村に迎える事に決めました。
剣士は、自分を拾ってくれた恩返しに、沢山の知恵と、若者に並ぶ勇敢さで、村のみんなを助けました。
そんな彼が、もう一人の英雄と呼ばれるようになる事は、誰の目にも明らかでした。
…そんな、ある日の事です。
剣士は、若者に疑問を投げ掛けたのです。
…どうして、村のみんなで戦うようにしないのですか?
…どうして、自ら傷付きに行くような道を選ぶのですか?
…どうして、痛みをみんなで分かち合おうとしないのですか?
それは、村の誰もが気付いていた訳ではありませんが。
若者と親しい三人や、彼に近い存在となった剣士には、気付かれていました。
…英雄は、村のみんなに、戦う事を強いたりはしませんでした。
悪い怪物たちが襲ってきた時は、戦う意思を持つ、数少ない村人と、彼だけで追い払ってきたのです。
言い換えれば、それは…みんながやりたがらないような辛い事を、全て英雄が受け持ってきたという事です。
剣士は、若者の身と、村の未来を憂い、その疑問を投げ掛けたのです。
このまま、英雄だけが傷付いていく事は、誰の幸せにもならない筈だと。
若者は悩みました。
むしろ、剣士の考えこそ、みんなを傷付ける事になるかもしれないと考えたからです。
悩んだ末、村のみんなに打ち明けることにしました。
若者の言葉を聞いた村人たちは、今まで若者に辛いことや、大変なことを押しつけていた、と反省しました。
…それからは、みんなで協力して、村を守る事にしました。
親友も、妹も、弟も、英雄たちといっしょに戦います。
それからは、怪物たちを村に入れる事はありませんでした。
…長い年月がたちました。
英雄たちの活躍がおとぎ話になり、かつての村は大きな街になりました。
悪い怪物たちは、まだやって来ます。
みんなで協力する事を忘れなかったヒトたちは、決して負けることはありませんでした。
かつて、英雄たちが守った村は、笑顔の絶えない平和な街として、これからも続いてゆくでしょう。
--さあ行こう。
彼女達が待つ、ホッカイへ。
けものフレンズ
-ミッシングけもリンク-
第一.四部
きずなのありか、おもいのゆくえ
鋭意制作中