短編:『組織』の研究
この度は、組織の新しい一員としてあなたを迎え入れられた事を、嬉しく思うわ。
私が組織の代表を務めている、オコジョよ。
…アニマルガールを見るのは初めて?
…以前、ジャパリパークの試験開園に招待された?
私の事も見た憶えがあるって?
ふふっ…不思議な縁ね。
それじゃあ、あなたに任せたい仕事の話をする前に、知っておいて欲しい事が幾つかあるわ。
まずは、サンドスターについて。
あなたぐらいの年齢なら、直に見たかも知れないけど…サンドスターは、ある日突然空から降り注いだ、地球外物質よ。
ここでの研究で、その正体は一種の生命体…平たく言えば、エイリアンだって事が判明したわ。
彼らは、丁度数日前に起きた、大規模な海底火山の噴火に反応して、地球に落ちて来たの。
…そう、今ではジャパリパークとして使われている、新しい島が一つ隆起してきた程の大噴火だったみたいね。
彼らはそういう強いエネルギーを感知して、それと結び付こうとする習性があるわ。
そして、地球に落ちたサンドスターは、まず二つのものを生み出した。
ラッキービーストと、セルリウムよ。
…後で保管庫にも案内するわね。きっと、実際に見てみた方が、色々感じ取れるものがあると思うわ。
『組織』の研究において、サンドスターは、二つの相反する性質のエネルギーを内包する、一つの生命物質だと考えているわ。
何かを生み出す、正のエネルギーと。
何かを壊す、負のエネルギー。
そして、ラッキービーストはこの正のエネルギーを司る、新しい生物。
セルリウムは、負のエネルギーを司る、新しい生命物質だと考えられているの。
ラッキービーストは、率先して動物をアニマルガール化させる役割を持っているみたいで、その体内からは、サンドスターが湧き続けているわ。
そして、セルリウムは…サンドスター・ロウと、セルリアンを生み出し続けている。
サンドスター・ロウは、サンドスターの正負の配分が歪められた物質よ。
あれは、サンドスターの負のエネルギーだけを欲しているの。正のエネルギーは、あれにとって毒なのよ。
そして、セルリアン…ヒトと動物達を、大勢死に追いやった、最悪のバケモノ。
あいつらは、食べたものからあらゆる知識を得て、学習し、進化するわ。
…その進化が、手に終えない程に達してしまったからこそ、あの悲劇は起きてしまったの。
…あなたも、家族を?
そう…。
…私達も、大切なヒトを失ったわ。
亡くすには、余りにも惜しいヒトだった。
…。
…ごめんなさい、暗くなっちゃったわね。
とりあえず、あなたに知っておいて欲しい事はこのくらいよ。
色々まとめてある資料も渡しておくわ。
…それじゃあ、仕事の話をしましょう。
あなたには、タイリクオオカミの元で、特派員の仕事をしてもらいたいの。
現地は動植物も豊富な環境だったけど、あれからどうなっているかは分からないわ。
運が良ければ、アニマルガール向けの栄養食「ジャパリまんじゅう」が残っているかもしれないわね。
…危険だし、過酷な仕事なのは間違いないわ。
それでも…。
…本当に?
…ありがとう。
あなたのようなヒトを、迎えられて良かった。
それじゃあ早速、タイリクオオカミの所に案内するわね。
…それと、個人的なお願いなんだけど。
試験開園の時の思い出は、忘れないであげて。
私の、大切な友達だった皆を…憶えていてあげて。